第19章 【toraitr】
クリスは徹夜明けだったので、開始10分くらいでこっくりこっくり居眠りを始めていた。
あと少しで完全に寝入る――そう思った瞬間、突然隣に座っていたハリーがガタっと立ち上がった。
「……どうしたね?えーっと……パーキンズ君?」
「えっと、その、僕、お腹が痛くて……」
「ふむ、では医務室へ行きなさい。――さて、これにより巨人の多くが……」
ビンズ先生が何事もなかったかのように黒板に視線を戻すと、ハリーは何かお腹に隠しているんだと分かるほど、こんもりしたローブのお腹を押さえて教室を出て行った。
「何があった?」
「ヘドウィグが手紙を届けに来たんだけど、怪我をしていたんだ」
「怪我?あのヘドウィグがか?」
「多分……もしかしたら誰かが無理やりヘドウィグを捕まえようとしたんじゃないかしら」
ハーマイオニーの不穏な発言に、クリスも同調した。
あの賢いヘドウィグが、そう易々と野生の獣なんかに襲われることはない。
可能性があるとしたら、ホグワーツの通信網を見張っている誰か――つまり、騎士団の敵だ。
授業が終わると、クリス達は生徒が集まる中庭でハリーを待った。
ほどなくして、ハリーが中庭に姿を見せた。
「ヘドウィグはどうだった?」
「グランブリー・ブランク先生に預けた。数日は飛ぶことが出来ないだろうって。それより、スナッフルからの手紙なんだけど……」
ハリーが小さい巻紙を開いて見せた。そこには【今日 同じ 時間 同じ 場所】とだけ書いてあった。
つまり今日の夜中に、またシリウスがグリフィンドールの談話室の暖炉に現れるという事だ。
それは嬉しくもあり、同時に心配でもあった。
「スナッフル、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、この手紙だけじゃ何のことだかさっぱりだし」
「そうとも限らないわ。誰かが煙突飛行ネットワークを見張っていたらお終いよ。それに、もう来るなって知らせを送る事も出来ない。私たちの手紙がいつ、どこで、誰に奪われるかも分からないのよ」
クリス達は『魔法薬学』の授業に向かいながら、あれこれ話し合った。
とにかく、シリウスと長い間話せば話すほど危険が及ぶだけなので、なるべく話は簡潔に済ませ、シリウスの身の安全を最優先にしようという結論を出した。