第2章 【癒せぬ傷】
「これはダンブルドア校長が自ら魔力を込めた、特別なゴブリン製の銀の腕輪です。銀には魔よけの効果があり、貴女の腕の痣の魔力を封じることが出来ます」
「魔力を、封じる?」
「ええ。正確に言うと魔力ではなく、呪いですが。ダンブルドアは貴女の『闇の印』には他の印と違い、ある種の呪いがかけられているとお考えなのです。ですから、それを封じるために貴女にこれを着けるよう校長から仰せつかって来ました」
クリスは自分の左腕に赤々と刻みつけられた『闇の印』を見つめた。
呪い――確かにそうかもしれない。この印の所為でクリスの人生は滅茶苦茶になった。だが、だからと言ってこんな大層な腕輪を着けなくてはならないほどなのだろうか。
ふと、クリスの脳裏に、幼き日に交わした父とのやりとりがよぎる。
『これは私とお前を繋ぐ印だ、だけど決して誰にも見せてはいけない。もしこの痣の事が誰かに知られてしまったら、私とお前は離れ離れにされてしまう……』
仕事優先で殆ど構って貰えなかったが、この時ばかりは父親の顔でクリスの頭を撫でてくれた。あの眼差しも、温かい手も、全てこの腕輪に封印されてしまうみたいで、なんだかクリスは心が痛んだ。
しかし着けろと言われたなら仕方がない。クリスが差し出した左腕に、マクゴナガル先生が腕輪をはめた。
「これで良いでしょう、それでは私は帰ります。新学期にまた会いましょう」
マクゴナガル先生が部屋を出て行くと、クリスは再びベッドに身を投げた。