第18章 【抉られた傷跡】
ハーマイオニーはなんでもない風を装ったが、微かに頬が染まっていた。
ロンは何か言いたそうに、やたらハーマイオニーの顔をじろじろ見ていたが、ハーマイオニーが1度たりとも視線を合わせなかったのでとうとう何も言えずに終わった。
「さあ、着いたわ。ここよ」
着いた先は『ホッグズ・ヘッド』と書かれたボロボロの木の看板がぶら下がったパブだった。
ホグワーツの生徒たちが大勢集まるいつもの『三本の箒』とは打って変わって怪しげな雰囲気丸出しで、いかにもならず者が集まりそうな場所だった。
4人は恐る恐る扉を開けると、中は外観通りの陰気な場所だった。昼なのに薄暗く、暖炉の火は小さく燻っているだけで『三本の箒』の様な暖かい雰囲気は一切ない。
中にいる客層も、みんな目深にかぶったローブや包帯で顔を半分以上隠しており素性が知れない。
これはハッキリ言って、ハーマイオニーの選択ミスではないかと思われたが、ここまで来て文句は言えないし作戦の変更もきかない。
取りあえず、4人は店の中ほどのテーブルに腰を下ろした。
「ねえ、何でここにしたの?」
席に着いた瞬間、ハリーが声をひそめて訊ねた。
「あんまり良い選択じゃないと思うんだけど」
「同感。あの真っ赤なベールをかぶった魔女が、アンブリッジじゃない可能性もゼロじゃないぜ?」
「アンブリッジがあんなに背が高い訳ないでしょ!それに『3本の箒』じゃ誰が話しを盗み聞ぎしているか分からないし、その点ここなら誰がどこにいるのか一目瞭然だわ」
「まあ……確かに、なあ……」
クリスは店内をぐるりと見た。
確かに学生はクリス達だけで、他の人間は――少なくとも人間と思える者は――とっくに成人した大人ばかりだった。
そんな事を話していると、店の奥から白髪頭で、同じくらい真っ白いひげを生やした背の高い老人のバーテンが出てきて注文を聞いた。
「バタービールを4本」
「……6シックル」
ハリーが慌ててポケットからお金を出してバーテンに手渡した。不機嫌そうな顔をしたバーテンはお金を受け取るとまた店の奥へ引っ込んでいった。
「それで、誰が来るの?」
「まだ分からないわ。声をかけてみたけど、全員が来るとは限らないし……」
そろそろ待ち合わせの時間だけど、とハーマイオニーが時計を見ながら付け足した。