第17章 【ハーマイオニーの計画】
その時、『太った婦人』の穴からハリーが姿を現した。
例の罰則は回を増すごとに酷くなっているようで、ハンカチで包んだ右手は血に染まっていた。
クリスは急いで部屋に戻り、怪我によく効く薬を取って来てハリーに渡した。
「それで、えー……丁度良いから、初めから話すわね。私の結論からして、このままあのアンブリッジのやりたい様にさせるのは全くもって時間の無駄だわ」
「そんなのナメクジだって分かってるよ。問題はどうするかだろ?」
「だからさっきクリスにも言ったけど、私達自身で学ぶの。『闇の魔術に対する防衛術』を!」
「うーん、そりゃ良いんじゃない?」
「先生は――彼方よハリー!」
「ええっ!!?えええええぇぇぇ!!??」
ハリーが大声を上げたので、それまで双子達の悪戯グッズに興味を惹かれていた1年生たちがこちらを振り返った。
慌ててハーマイオニーが「何でもないわ」と言って手を振ると、1年生たちはまた双子の開発した悪戯グッズに夢中になった。
「大声出さないで」
「だって、無理だよ!どう考えても君が教える方が良いに決まってる」
「いや……そうかな?」
ロンが腕を組み、神妙な顔をしてハリーとハーマイオニーの顔を交互に見た。
「確かにハーマイオニーは優秀だけど、ハリーの方が経験豊富だ。なにせ3度も『例のあの人』を退けたし、大人でさえ作り出すことの難しいパトローナスを召喚できる」
「でも『例のあの人』を退けたのは僕1人じゃない、クリスが居てくれたから――」
「その私は、今やスクイブ同然だ」
この時ばかりは自嘲ではなく、事実として伝わるように注意してハリーに伝えた。
ヴォルデモートが復活した今、ハリーは命を狙われ続けるだろう。
しかしそれはハリーに限った話ではない。この先ヴォルデモートが勢力を増し続けた結果、多くの人の命が消されていくだろう。
そう、セドリックの様に、何の罪もない人々が殺されていくのだ。それを、ただ黙ってやり過ごすだけで良いのだろうか。否、良いはずがない。