第17章 【ハーマイオニーの計画】
もしも、もしも今、傍にもしセドリックが居てくれたら――。
しかし、そう考えれば考えるほど苦しくなって涙が出そうになった。
分かっている、セドリックはもう居ない。あの日、あの場所で死んでしまったのだから。
だが会えないと思えば思うほど想いは募る。あの優しい声に、あの優しい眼差しに、もう一度包まれたい。だけど――……。
クリスは絶望とはこういうものなのだと、言葉ではなく心で理解した。
その日の夕食はまるでお通夜の様だった。
ハリーはこの後アンブリッジのクソみたいな罰則が待っていたし、クリスはショックで食が進まず、結局ほんの少しだけローストビーフを口にすると、返さなきゃいけない本があると言って1人図書館へ行った。
図書館で、クリスは返した本の倍の本を借りた。
どうせ今夜も眠れないのだから、暇つぶしに普段は読まないような本まで借りてみた。
司書のマダム・ピンスが「本当に期日までにこんな量の本を読むのか?」と言いたげな目で見てきたが、クリスは無視して談話室に返った。
『太った婦人』に合言葉を言い、苦労して沢山の本と共に談話室の穴をよじ登ると、いつも通り、リーと双子がバカ騒ぎしている部屋の隅で、ロンとハーマイオニーが居るのが目に入った。
クリスは一呼吸おいてから話しかけた。
「やあお二人さん、どうした?こんな隅によって」
「今、丁度計画を練っていたところよ」
「計画?」
「アンブリッジのババアに毒を盛ろうかって計画」
良い計画だ、と一瞬クリスは思ったが、ハーマイオニーが「馬鹿言わないで」と咎めた。
ハーマイオニーの表情は真剣だ。だからこの提案をされたとき、これはハーマイオニーが考え抜いて出した最善の結論だと思う事が出来た。
「私ね、考えているの。私たちに今必要なのは経験と実践よ。つまり――相手がやらせないのなら、自分たちで学ぶの」
「自分たちで学ぶ……って、どんな風に?」
「つまり先生役を1人たてて自習するの。先生役は――」