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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第17章 【ハーマイオニーの計画】


「……さて、前回の授業で皆さんの殆んどがカタツムリを消失させることに成功しました。これからやる事はその応用で、ほ乳類であるネズミを同じように消失させることです」
「――エヘン、エヘン」
「ですが同じようにと言っても、無脊椎動物であるカタツムリとほ乳類であるネズミとでは難易度が異なります。ですから――」
「エヘン!エヘン!!」

 アンブリッジのわざとらしい咳払いが、マクゴナガル先生の授業を止めた。
 マクゴナガル先生は眉間に深いシワを寄せながら、不愉快極まりないと言った表情でアンブリッジの方を見た。

「……なにか?」
「失礼、わたくしのメモが届いているか心配になりまして。査察の日時を記したメモですが――」
「届いております。でなければ私の授業に断りもなく入ったことを許可出来かねませんので」
「それは失礼。では質問ですが、この授業では“スクイブ”の生徒にも実地で訓練をさせておりますの?」

 その瞬間、マクゴナガル先生の顔がハッキリと怒りの表情に変わった。
 それと同時に、クリスは胃がねじくり返るような、喉に大きな石が詰まったような息苦しさを感じた。
 ――スクイブ、そうかスクイブか。見る人から見れば自分は出来損ないのスクイブなのだと、クリスはどうにも出来ない辛い現実を味わった。

 マクゴナガル先生は、ツカツカとアンブリッジの目の前まで歩いていくと、椅子に座っているアンブリッジを見下ろすようにして声を荒げた。

「先日癒者から診断書を提出して頂いた通り、彼女は一時的に魔法が使えない状態にあるだけで全く魔法が使えないスクイブとは異なります!今後私の生徒をスクイブ呼ばわりするなら、それ相応の証拠を揃えてから仰ってください!!」

 それからマクゴナガル先生は、アンブリッジの方を全く視界に入れず授業を進めた。
 アンブリッジはもう口を挟むことはなかったが、代わりにクリップボードに多くのメモを残した。

 授業が終わり、マクゴナガル先生が教材を回収している時、一瞬クリスと目が合った。
 先生は優しい顔で笑っていた。「何も心配することはない」と励ましてくれているみたいだったので、クリスは少しだけ気分が良くなったが、依然としてスクイブと呼ばれたショックが消えることはなかった。
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