第16章 【トレローニーに同情した日】
「――半巨人のルビウス・ハグリッドを雇い入れた経緯を持つ。これについては父兄からも大きく反感の声が上がり、当局もダンブルドアに終わりの時代が近づいてきている事に懸念を隠せない」
「……これよ」
「どれよ?」
ハーマイオニーが新聞を折りたたみながら言うと、ロンが聞き返した。察しの悪いロンに、ハーマイオニーが怒りの声を上げた。
「だから、これが魔法省のやり方なのよ!スパイを送って来ただけでは飽き足らず、今度は監視!!どこまで汚い連中かって言いたいのよ!!」
話には聞いていたが、ここまで露骨とは。クリスはルーピン先生の一文を含め胃がむかむかしてきた。
ファッジはいったい何のために大臣職の椅子に座っているのだろう。もしかして尻で椅子をきれいに拭く為だけなのだろうか。
下らない省令など作っている暇があったら、力を取り戻したヴォルデモートに対抗する手段の一つでも、少ない脳みそでひねり出してほしい。
「まあ、でもある意味期待は出来るよね?」
「どんな?」
「マクゴナガル先生の授業とか、さ」
フフッと、ハリーは含みのある笑いをした。その笑みを見ただけで、3人はハリーが何を考えているか大よその予想はついたが、口には出さなかった。
朝食が終わると、4人は早めに『魔法史』の教室に向かった。廊下を歩きながら、クリスはハーマイオニーから散々「アンブリッジがいつ査察に来るか分からないから絶対に居眠りなんてしないでね」と言われ、折角の貴重な睡眠時間を削られて不機嫌丸出しで教室に入った。
他の生徒も、アンブリッジの件を知ったのだろう。いつもより多くの生徒が授業中起きてビンズ先生の退屈な授業を聞いていた。
しかし、アンブリッジは『魔法史』の授業には来なかった。次の『魔法薬学』の授業にもアンブリッジは訪れなかった。
授業の前半、スネイプは『月長石』のレポートを生徒達に返しながらこう言った。
「今回は『O・W・L』の試験レベルに合わせて採点してある。諸君らが実際に試験を受けた際、どの様な点を取るか、これでハッキリするはずだ。もし今回のレポートで『D』判定を下された生徒が居たら、その者は次回までに死ぬほど努力して貰わねばならぬ。懲りずにまた次『D』など下されたのなら、その場で罰則を科さねばなるまい」