第2章 【癒せぬ傷】
「まさか、そのクリーチャーっていう屋敷しもべ……ウィンキーと同系列なのか?」
「ん~、違うけど……余計ややこしいって言うか……変人っていうか」
「変人じゃないわよ!ただちょっと……そう、長い間独りだったから、寂しがっているだけよ」
「寂しがっている奴が、折角捨てたゴミ袋をひっくり返したり、嫌味を言いながら僕らの部屋を通り過ぎたりしますかね?」
屋敷しもべに関しては、変に肩入れしていない分、ハーマイオニーよりロンの方が的確な見方をするので、クリスはこれ以上クリーチャーと言う屋敷しもべに関しては触れない事にした。また『反吐』の話しを持ち出されたら堪ったものじゃない。
午後になっても、ハリーが屋敷に来たと言う知らせは無かった。大人達は皆応接間にこもったきり出てこないし、ウィーズリーおばさんですら、昼食を作りに来ただけで、すぐ部屋に戻ってしまった。
だんだんクリスの胸に不安がつのってきて、表情がくもってくる。何か事故でもあったんじゃないか。もしかして、『死喰い人』が直接ハリーを襲いに向かったんじゃないか。いや、最悪ヴォルデモートが――。
不安の種は尽きず、クリスはのん気に掃除をしている気分じゃなくなってきた。
「すまない……部屋に戻っても良いか?」
「あ……ああ、もちろんだよ!」
「でも――」
ハーマイオニーは何か言いたそうにしていたが、ロンが肘で突いて黙らせた。
クリスは自分が情けなく思ったが、黙って部屋を出た。そして寝室に戻ると、枕に顔を埋めてジッとしていた。するとコンコン、と誰かが扉をノックする音が耳に入った。
「……誰だ?」
「私です、ミス・グレイン。入ってもよろしいですか?」
この厳格な声は、マクゴナガル先生だ!クリスはバッとベッドから飛び起きると、クシャクシャになった髪を撫でつけ、急いで扉の鍵を開けた。
「す、すみません先生!まさか先生がいらっしゃるとは思わなくて」
「いいんですよ。それより、ダンブルドアから貴女にある物を渡すよう仰せつかっています」
「ダンブルドア先生から?」
「そうです。部屋に入っても?」
「はっはい、どうぞ……」