第2章 【癒せぬ傷】
翌朝、クリスは珍しく1人で起きてみんなと一緒に朝食を取った。ウィーズリーおばさんが気をきかせてクリスにポテトサラダを大盛でよそってくれたが、元々朝は紅茶1杯で満足する性質なので、クリスは苦笑いをしてポテトサラダを残した。
それから朝食が終わったら、大人たちは会議と言って応接間に閉じこもり、子供たちはそれぞれバケツと雑巾を持って屋敷の掃除をすることになった。
と、言うのもこの屋敷が長年使われていなかったせいで、埃はたまり、暖炉はススだらけ、おまけにわけの分からない妖魔が住み着いていて、とてもじゃないが落ち着いて暮らせる環境ではないのだ。
それでも、クリスがこの3週間以上部屋に閉じこもっている間に、皆が頑張ってくれたお陰で、初めて来た時よりだいぶマシになっていた。
「君が手伝ってくれて助かるよ、ホント猫の手も借りたいくらいだったんだから」
「そうよ!それに今日はハリーの誕生日ですもの、久しぶりに4人一緒に過ごせるわ!!」
クリスはロンとハーマイオニーと一緒に、窓ガラスを拭くことになった。窓ガラスを拭きながら、クリスはチャンドラーの事を思い出した。
窓ガラスの掃除なんて、産まれてこの方やった事がない。当たり前だ、屋敷の手入れはみんなチャンドラーがやってきたのだ。
手入れだけじゃない、料理も、洗濯も、なにもかもチャンドラーひとりに任せてきた。
今、チャンドラーはどうしているだろう。あの広い屋敷でひとり、帰らぬ主人を待って掃除でもしているんだろうか。そう思うと、クリスの胸にチクンと棘が刺さった様だった。
「なあ、ここにも……屋敷しもべがいるんだろう?」
クリスの言葉を聞いて、ロンがあからさまに嫌そうな顔をした。
「まさかクリス、アイツに手伝わせる気じゃないよね?」
「いいえっ!ナイスアイディアだわクリス!クリーチャーも一緒に掃除をすれば良い交流の機会を持てるわ!!」
ロンとハーマイオニーの温度の違いを感じ、クリスは嫌な予感がした。