第14章 【それぞれの思い】
取りあえず、その場はロンの秘密も内緒にしておくから、このことは内緒にしておいて欲しいとお願いすると、てロンも渋々納得した。だがもしこの罰則がエスカレートしていくようなら、間違いなくマクゴナガル先生に訴えるとロンは言った。
そうならない事を祈って、翌日、ハリーとクリスは最後の罰則を受けにアンブリッジの部屋を訪れた。その日はちょうどキーパー選抜の日だった。ハリーは少しでも様子をうかがおうと、いつもより椅子を20cmずらして座った。クリスは誰が選ばれようと関係なかったので、いつも通り窓を背にして座った。
「やることは分かっていますね。それじゃあ、始めなさい」
ペンで羊皮紙の上をなぞると、途端に傷が開いて血が出てきた。クリスはグッと食いしばり、痛みに耐えた。一文字一文字書く度、ナイフで切り裂かれるように皮膚が裂け血がしたり落ちる。
きっとこの傷は永遠に残るだろう。だが良い、「その位で丁度良い」魔法も使えず、夜も満足に眠れず、ただ日々を無駄に過ごしている現状で、これは最高の「スパイス」だ。これ位でないと、喧嘩を売った意味がない。
痛みとは裏腹に持ち上がる口角を抑え、ただひたすらに文字を書くこと数時間。日はとっくに暮れ、夜空に綺麗な星が瞬く頃、やっとアンブリッジが「そこまで」と言った。
「さあさあ、手を見せてちょうだい。あらまあ、綺麗に刻まれて……」
アンブリッジの指が触れるか触れないかのところで、クリスはさっと手を引っ込めた。あんな短くてブクブクと太った汚らしい手に触れられたら、何度洗っても穢れが落ちる気がしない。
クリスはあえて何も言わなかったが、それをどう取ったのか、アンブリッジは勝者の微笑みを見せた。
「これで少しは教訓になったでしょう?もう帰ってよろしい」
「では。行こうハリー」
「さようなら」
それだけを言うと、2人はさっさとアンブリッジの部屋を出た。
初めはいつも通り早足で廊下を突き抜けて行ったが、アンブリッジの部屋から十分離れると、ハリーがいきなり振り返ってクリスの肩を掴んだ。