第14章 【それぞれの思い】
「クリス、気持ちは分かるけど――」
「はいはい、水を差すなって言うんだろう?分かったよ」
「それと、お願いだからこの事は誰にも言わないで。特にフレッドとジョージが知ったら、絶対からかうに決まってるから」
「ハーマイオニーには?」
「それもダメ。あいつ僕が監督生になった事を今でも信じてないんだから」
それとこれとは別問題の様な気がしたが、当の本人が嫌がっているのだから仕方がない。
談話室への帰り道、ハリーとロンはクリスをそっちのけにして、クィディッチ語りに熱くなっていた。こうなってしまってはクリスの口をはさむ余地はない。
2人の後ろをとぼとぼと歩いていると、ふと、ロンがハリーの手の甲に目をやった。
「ハリー、何その傷?」
「あっ、これはその……なんでもない」
明らかにハリーの態度が怪しかったので、ロンが素早くハリーの手を掴んで引っ張った。手の甲に刻みつけられた文字を見て、ロンの目が吊り上がった。
「何だよこれ!!あのクソババア、何が書き取りだ!!こんな傷っ……クリス、まさか君も!?」
隠す間も無く、ロンがクリスの手を無理やり引っ張った。クリスの白い肌に刻まれた醜悪な傷を見て、ロンは怒りに震えた。
「ふざけんな!2人とも、今すぐマクゴナガルのところに行け!行かないんなら僕が行くぞ!」
「止めてくれよロン、これは僕らとアンブリッジの戦いだ。他の人を巻き込みたくない!!」
「戦いだって!?こんなの単なる虐待だよ!――ああっ、クソッ!!」
ロンは怒りが爆発して、衝動的に壁を拳で叩いた。自分たちの為にここまで心を砕いてくれる友人がいるのかと思うと、ありがたい反面困ってしまった。
ロンの気持ちは嬉しいが、ハリーの言う通りこれはアンブリッジと自分との戦いだ。誰かに弱音を吐いていることがアンブリッジの耳に入って、ヤツを喜ばせたくなどない。
もちろん、アンブリッジもそれを承知でこの屈辱的な罰則を受けさせているのだろう。嫌味な奴だが効果は絶大だ。