第14章 【それぞれの思い】
やがて時計が12時を指し示す頃、やっとアンブリッジから解放された2人は、そのまま談話室で明日までの宿題を片付けることになった。
中でもスネイプの出した月長石のレポートは困難を極めたが、何とか30cm以上書き終え、ハリーとクリスは「また明日」と言うとそれぞれ自分の部屋に戻った。
ベッドの中で、クリスは2・3回杖を振るい、何の変化も訪れない事が分かると、それ以上努力するのが馬鹿馬鹿しくなって杖を放り投げた。
しかし目をつぶっても、またあの悪夢を見るんじゃないかと怖くなって、結局気を紛らわせるため余分な宿題をすることで時間を潰した。
「クリス、貴女大丈夫?」
「心配してくれるなら、今日出た宿題を紙に書いておいてくれ。その間、私は寝てるから」
翌朝、朝食の席でハーマイオニーがクリスの目の下に出来たクマを見て心配そうに声をかけた。今のクリスにとって授業中ほど心安らかに眠れる時間はなかった。いや、眠ると言うより“落ちる”と言う言葉の方が正しかった。
睡眠不足が限界を超えると、クリスの身体は勝手に眠りに落ちた。どうせ夜は例の悪夢の所為で眠れず時間を潰すため勉強をする羽目になるのだから、どこで帳尻を合わせようと同じことだった。
3日目のアンブリッジの罰則も酷いものだったが、ハリーもクリスも痛みに耐えた。しかし、とうとう傷が完全に塞がらず痣となって残るようになると、憎たらしい事にアンブリッジは満足そうに笑って手を止めるように言った。
「んっん~、2人とももう少しですね。あともう2、3日やれば言葉の意味を心に刻めると思うわ。それじゃあまた明日」
ハリーとクリスは「さようなら」の一言すら言わず、黙って部屋を出た。アンブリッジの部屋を出た途端、傷がズキンズキンと痛みを増したが、唇を噛みしめ耐えた。ハリーとは口をきかなかったが、互いの気持ちは同じだと感じた。
2人揃って早足で廊下を突っ切っていると、曲がり角で誰かとぶつかりそうになり思わず声を上げた。見るとロンが箒を片手に、廊下の端っこから現れたところだった。コソコソと背中を丸め、相手がハリーとクリスだと分かるとパッと箒を後ろに隠した。