第14章 【それぞれの思い】
「どういう事!?金曜のキーパー選抜に来られないって!!」
「くそアンブリッジの罰則なんだ、仕方ないよ」
「どんな罰則だか知らないけど、その日だけは絶対に空けてきて!分かった!!?」
それだけ言うと、アンジェリーナは怒って大股で去って行った。ハリーは言いたい事も言えず、イライラしてテーブルを拳で叩いた。その衝撃でゴブレットに入っていたカボチャジュースが少し零れたが、ハリーは気にも留めていなかった。
「僕だって喜んであんな罰則を受けているわけじゃないのに!!」
「あんな罰則って、どんな罰則なの?」
ロンの質問に、ハリーとクリスは一瞬顔を見合わせたが、そろって「書き取り」とだけ言った。
もし自分の血を使って書き取りをさせられていると知ったら、ロンもハーマイオニーも大騒ぎするだろうし、それ以上に誰かに告げることで、アンブリッジに弱音を吐いたと思われるのは嫌だった。
夕食を終え、罰則の時間がやってくると、ハリーとクリスは揃ってアンブリッジの部屋を訪れた。前回同様アンブリッジの部屋の中心には仕切られたテーブルがあり、既に羊皮紙とあの羽ペンが用意されていた。
駄目だと分かっていても、ハリーは一応アンブリッジに金曜の罰則だけ免除出来ないか訊いてみた。するとアンブリッジは甘い蜜を啜るかのような笑みを見せた。
「チッチッチ、ミスター・ポッター。それは駄目よ、貴方は見栄っ張りの嘘を吐いて罰則を受けているんですからね。それなのに自分の意見を通そうだなんて、ちょっと都合が良すぎると思いません?そんな甘い人生ばかり送っていては、貴方の悪癖ばかり増長されてしまいますよ」
このクソババア、とクリスは心の中で毒吐いた。もし魔法が使えていたら、呪いの1つでもかけていたかもしれない。それほどまでにクリスの中でアンブリッジに対する憎悪が募っていたが、ハリー自身が我慢している今、クリスが癇癪を起こすわけにはいかなかった。
ハリーは何も言わず、テーブルに座ると黙って書き取りを始めた。クリスもそれに倣う。アンブリッジが見つめる中、2日目の罰則が始まった。
前回に比べ、今回は傷が治るのが遅くなったが、ハリーもクリスも黙ったままだった。ただ馬鹿みたいな文句を延々と書き続ける。皮膚が裂け、血が滲んでも2人は一言も漏らさなかった。