第2章 【癒せぬ傷】
どこで知ったのか、最近シリウスはクリスで遊ぶことを覚えた。きっとフレッドとジョージのどちらかが教えたに違いない。今度会った時殴っておこう。
シリウスは笑いながら、クリスの頭をクシャッと撫でた。
「冗談だ。ほら、食事にしよう。折角モリーが作ってくれたんだ。温かいうちに食べよう」
シリウスが一緒だと、それだけでクリスの心に温かいものが流れ込んでくるような気がする。しかし不死鳥の騎士団の一員として、いつもクリスのご機嫌取りばかりしているわけにはいかない。
不死鳥の騎士団と言うのは、ダンブルドアが先導者となって『名前を言ってはいけないあの人』と戦う同盟軍の事だ。
しかしその全貌は団員しか知らないし、当然クリス達の様な子供の耳には会合の内容が漏れないよう、ウィーズリーおばさんが目を光らせている。
だからアジトに移って来て3週間近く経つが、部屋に閉じこもりっぱなしのクリスは、団員がどの位いるかも知らないし、何をしているのかも知らない。
それでも良いとクリスは思っていた。少なくともここに居れば『死喰い人』達がクリスを利用しようと襲ってくる事はない。
それに、ここに居ればすぐ傍にシリウスがいる。例え夜、悪夢にうなされても、シリウスの部屋を訪ねれば朝までシリウスが一緒にいてくれる。それだけが、今のクリスの心の支えだった。
しかし、それはシリウスの一言を聞くまでの事だった。
「実は……君には言わないようモリーに口止めされたんだが……黙っていても仕方がない。ハリーがディメンターに襲われたそうだ」
「えっ!?」
思わずクリスはフォークとナイフを取り落した。聞き違いであって欲しい。ハリーが、ディメンターに襲われただって?
クリスは飛びかかる勢いでシリウスに詰め寄った。
「それで!?ハリーは無事なのか!?怪我は?まさか魂を吸われたなんて事ないよな!!?」
「落ち着け、ハリーは大丈夫だ。だが守護霊を呼ぶために魔法を使った所為で、魔法省から達示が来ているはずだ。今ダンブルドアが魔法省へかけ合っている」
クリスは思わず歯噛みした。自分の事ばかり気にしていたが、本当に大変なのはハリーだ。