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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第12章 【LOST】


「現実世界?学生にとっての現実世界とは学校でのことが全てです」
「では、学校を出た後の事については何の責任も取らないという事ですか?」
「学校を卒業した後、不慮の事故に遭ったと仰りたいのなら、学校側には責任はありません」
「では在学中、僕は3度も命を狙われましたが――知っているでしょう?ヴォルデモートですよ。それについての責任は?」

 ヴォルデモートの名前が出た瞬間、隣に座っていたロンがハッと息をのみ、ラベンダーとパーバティがキャッと悲鳴を上げ、ディーンはびくっと肩を震わせた。
 クリスは流石のガマガエルもヴォルデモートの名前があがれば少しは表情を変えるだろうと思っていたが、アンブリッジは気味の悪い笑顔を浮かべたままだった。

「グリフィンドール10点減点、座りなさい」

 だがハリーは座らなかった。教室は今やシーンと静まり返っていた。アンブリッジは教壇から離れ、生徒たちの間をゆっくりと歩いて説き聞かせた。

「さて、これだけは皆さんにはっきりさせておきましょう。皆さんは先学期末、ある闇の魔法使いが復活したと聞かされましたが、これは嘘です!」
「嘘じゃない!!」
「罰則です、ミスター・ポッター!!――話しを戻します。あろうことか、学校側がある魔法使いの復活を肯定しているようですが、魔法省はそれを強く否定します。魔法省は一片の嘘も申しません。皆さんの身の安全は魔法省が保証します。もし皆さんの間で、他愛のない嘘でいたずらに恐怖をまき散らすような不逞な輩がいましたら、わたくしにお知らせください。わたくしは皆さんを助けるためにいるのです」

 よくもぬけぬけと、とクリスは思った。今やクリスの怒りは氷点下まで冷え切っていた。燃えるような勢いのある怒りから、冷たく貫くような怒りへと変わっていた。

「それでは皆さん、授業に戻りましょう。教科書の5ページ『初心者の基礎』を読んで――」
「では先生は、セドリック・ディゴリーは勝手に死んだというんですね」

 アンブリッジの言葉を遮るように、ハリーの声が響いた。瞬間、クリスの目頭が熱くなった。
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