第12章 【LOST】
しかし、反抗的なのはクリスだけでは無かった。アンブリッジに教科書を読むように言われると、なんとあのハーマイオニーが教科書を手に取る事すらせず、無言で手を挙げた。
このハーマイオニーの反抗的態度には、隣に座っていたハリーもロンも驚いて見つめていた。
ハーマイオニーの反抗に、アンブリッジはどう対応したかと言うと、ただ教壇の椅子に座り、そっぽを向いてハーマイオニーから視線を避けていた。
だが5分経ち、10分経ち、15分以上が経ちクラス全員の視線が教科書ではなく、無言の間で繰り広げられているハーマイオニーとアンブリッジの戦いに注いていると分かると、とうとうアンブリッジも折れざるを得なくなった。
「どうかした?ミス、えー……」
「グレンジャーです。先生、この授業の目的についてお答えください」
「ミス・グレンジャー。教科書をちゃんと読めば、授業の目的はちゃ~んと分かると思うわ」
「いいえ、分かりません」
アンブリッジが言い終わるか終わらないかの間に、ハーマイオニーが素早く答えた。
「私の見解からして、この教科書に防衛術を使う事に関して何一つ書かれていないことから、授業では全く呪文を扱わないと言うのが目的なら別ですが」
「呪文を使わないって!?」
ハーマイオニーの発言に、教室全体が騒めいた。
生徒たちはハーマイオニーの言っていることが本当なのか、教科書をものすごい勢いで捲って確かめている生徒もいれば、呪文を使わない授業がこれまでどんなつまらない授業だったかを思い返し、議論を始める生徒もいた。
アンブリッジは「皆さんお静かに」と言って宥めさせようとしているが、全く静かになる気配はない。これは良いぞ、とクリスは腹の中で思った。
騒然としたクラスの中、またもやハーマイオニーが手を挙げた。
「先生、『闇の魔術に対する防衛術』とは、即ち防衛呪文の習得にあるのではないですか?」
「ミス・グレンジャー。わたくしが「ハイ」と返事をするまで発言してはいけません」
「でもそんなの待ってたらいつまで経っても発言できないじゃん」
「わたくしの授業で発言したい生徒は、手を上げること!ミスター?」
「ウィーズリーです。ロナルド・ウィーズリー」