第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
「う、うるせえよ!!」
哀れみの目に耐えられなくなったのか、主犯格の隊士が遂に口を開いた。
「あ、あの女は危険だ...いつ鬼側に寝返るかわからない、だ、だから今のうちに弱みを握ろうと。俺は!鬼殺隊の為に...!!」
「そうだ!俺達は正しい事をした!」
「鬼に何をしようが関係ないだろ!!」
不愉快極まりない言葉。
数少ない女隊士の表情も歪む。
当たり前だ。
鬼殺隊という大義名分の元、鬼と言えど女を襲った男達が嬉嬉として正義を語る姿は実に滑稽。
「貴方達いい加減に...!」
我慢の限界に達した女隊士の一部が声を上げる。
「黙れ。」
「ひいいいいぃぃ!!」
吠える隊士の首元に大鎌の切っ先が添えられたのはその時だった。
動いたのはこれまでずっと黙っていた烟霞。
固く握りしめ過ぎた大鎌の持ち手から血が滴る。
最大限の我慢をした結果だろう。
人間を大切にする刹那への忠誠の証とも取れる。
「あの方は、お前らのような人間が気安く触れていい方ではない...あの方は、刹那様は!!!「烟霞」っ...」
制止のような朱嘉の呼び掛けに、烟霞が渋々大鎌を引く。
命の危機は去ったが、あれだけ威勢のよかった隊士は真っ青になりその場に崩れ落ちた。
「抑えろ...俺達だって我慢してる。お嬢との約束がなきゃ、今すぐにでもそいつらを殺してやりてえんだよ...」
当たり前のように言う朱嘉に、その場の空気がまた固まる。
鬼神達にそれ程まで慕われる刹那。
(一体何者なんだ....)
誰もがそんな事を思う。