第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
結局お館様は最後まで同行者の名前を教えてくれず、そのまま帰されてしまった煉獄。
とぼとぼと自邸への道を歩く。
(頑なに教えていただけなかったが、それ程厄介なのか?)
頭を捻りながらうむむうむむと考えていればもうそこは見慣れた自邸の門。
ただ少しだけいつもと違う。
いつもなら薄暗く千寿郎の部屋だけが明るい自邸だが、今日は珍しく広間に明かりがある。
耳をすませば聞こえてくる千寿郎と刹那の笑い声。
その中に父の声は聞こえなかったが、自分が居ない時ここまで賑やかなのは何時ぶりだろうか。
邸宅の明かりがいつもより心地よく感じるのはきっと、この笑い声のせいだ。
(明日の事は明日考えればいい、今は...)
聞こえる笑い声と暖かな雰囲気に、浮き足だった煉獄は吸い込まれるように門をくぐった。
(今はただ聞かせてくれ、生きて帰ったのだと実感出来るあの言葉を)
「ただいま!今帰ったぞ!!」
「お帰りなさい兄上。」
『お帰りなさいませ煉獄様』
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そしてまた陽は昇る。