第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
(そうか、あの時父上が言っていたのは露柱の話だったのか...)
先程まで朧げだった幼い頃の記憶は、今や鮮やかに脳裏に浮かぶ。
あの時父の表情から読み取れたのは、深い尊敬の念だけだった。
柱であった煉獄の父がそれ程までに尊敬し、息子の道を広げてくれると信じた人。
純粋に興味を引かれた。
そしてそんな露柱の娘という刹那の事を、もっと知りたいと煉獄は思った。
実際、今回の任務で刹那への警戒心など無くなってしまったし
戦闘力だけ見ても鬼殺隊の一員として認めざるを得ない。
なんならこれからの任務も刹那と共に行きたいとすら思ってしまうから、刹那はとんだ人たらしだと思う。
人の心を掴むのが上手いのだろう。
まるでお館様だ。
特別媚を売っているわけでも、嘘をついている訳でもないから疑っている此方の方が悪人のよう。
(不思議な子だ...)
今頃隠と共に家に着いているであろう刹那を思い浮かべて、少しだけ頬が緩む煉獄。
そんな煉獄を感じてお館様もまた笑う。
「どうやら杏寿郎はもう刹那を気に入ったようだね。これなら明日の任務は大丈夫そうだ。」
「よもや!お館様は、明日の任務に何か気がかりがあられたのですか!何より明日の任務とは!!」
先程まで考え事のせいで小さく保たれていた煉獄の声は、すっかり元の声量で勢いよくお館様の言葉をまくしたてる。
「うん、明日はね少し厄介なんだ。鬼と言うより、同行してもらう子達がね。」
「よもや!その同行者とは!」