第14章 拾肆ノ型. 遊郭潜入
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煉獄side
不思議な夢を見た。
「此処は...俺は眠った筈だが...」
頬を撫でる暖かな空気に目を開ければ
眼下には藤が咲き乱れる美しい庭園が広がり、俺はそこに1人立っていた。
一瞬お館様の屋敷かとも思ったが、どうやら違う。
初めての景色に戸惑いつつも、辺りを見渡せば遠くに見える見覚えのある顔。
しっかりとした足取りで此方へ歩いてくるその人物に、自然と背筋が伸びた。
「よう、こうやって会うのはあの時以来か?」
「貴方は...」
まるで旧知の仲のような口ぶりで、そう笑ったのは刹那の父君。
藍色の着流しを粋に気崩して刹那によく似た紅い目が、波打つ黒髪の間から覗いている。
彼が言うあの時というのは、自身が死にかけ現世への道を案内してくれた時の事だろう。
「貴方のお陰で目覚める事が出来た。感謝する。」
深々と頭を下げた俺に父君はさらに笑う。
「そんなに畏まらなくてもいいさ。俺は逢魔。好きに呼んでくれ。」
「では逢魔さんと。」
言って顔をあげれば、おいでおいでと手招きされる。
何かと戸惑いつつ近づいた俺の左目と鳩尾をひとなでし、安心したようなため息を吐くから緊張していた分拍子抜けしてしまう。
「綺麗に治ったな。刹那に秘術を教えておいて正解だった。お前を失ったら刹那が泣いちまう。」
言って、刹那は元気かと続けざまに聞くあまりにも優しい表情に俺は言葉を忘れた。