第12章 拾弐ノ型.焦がれる
「今帰った!!」
邸宅に着くやいなや、響き渡る煉獄の声。
一拍置いて奥の方から足音が聞こえてくる。
音の主は千寿郎だ。
元々垂れた眉を更に垂れさせ、目に涙を溜めながら煉獄へと飛びつく。
「兄上!兄上!!」
4ヶ月前鎹鴉によって兄の容態を知った千寿郎は、毎日気が気では無かった。
だからこそ目の前で以前と変わらない姿で微笑む煉獄に、張り詰めていた糸が切れ堰を切ったように涙が零れる。
赤子のように泣く千寿郎の背中をぽんぽんと優しく叩きながら、煉獄はにこにこと笑う。
「すまない千寿郎。心配をかけたな...」
________________
___________________
_____________
______
どれくらい経ったか一通り泣き終えた千寿郎の目は真っ赤で、今更ながら襲ってくる羞恥に耳まで赤くしながら煉獄から飛び退いた。
普段しっかりしている分、こういう時はもっと甘えてくれてもいいのだがと煉獄は思う。
甘えを知らない煉獄が言うのもどうかと思うが。
「す、すみません兄上!!お召し物が濡れてしまって!」
「良いさ!それだけ俺が千寿郎に心労をかけてしまったからな!!」
ここで兄の服の心配をするあたりが、しっかり者の証というか大人びているというか。
何ともまあ出来た弟だ。
はっはっはっと豪快に笑う煉獄にすみませんともう一度謝ってから、千寿郎は煉獄の荷物を持ち一緒に邸内へと入る。
久方ぶりに帰ってきた自邸はどこも変わらず、強いて言えば刹那が居ないこと位か。