第12章 拾弐ノ型.焦がれる
「本当に信じがたいですね。炭治郎君達は煉獄さんの鳩尾に上弦の腕が貫通していたのをはっきり見ていたのに、傷が綺麗に塞がっている。それに左目も、この調子なら視力を失う心配も無さそうです。」
あの夜から早4ヶ月。
もう何度目かの検診で、胡蝶は煉獄の傷の回復に目を見張っていた。
炭治郎達や、紫苑から刹那の術の効果については大まかに説明を受けていた胡蝶だが
流石に柱に復帰することは難しいだろうと思っていただけに、煉獄の体の状態に驚愕する。
落ちた体力も、これから鍛錬をこなせばあっという間に戻ってしまうだろう。
包帯の取り換えも終わりいそいそと服を着直す煉獄の表情は何処か楽しげだ。
「ふふ、楽しそうですね煉獄さん。」
「む?!そうか?」
照れたように笑う煉獄。
その理由も、胡蝶には分かっている。
4ヶ月しっかりと治療を施したので、今日から煉獄は自宅へ戻り定期的な検診だけという流れになったからだ。
(まあ、家に居れば刹那さんに毎日会えますからね。)
明らかに上機嫌な煉獄を見て胡蝶もつられて笑う。
ここ数ヶ月、煉獄が一時的な昏睡状態より目覚めてから任務の合間をぬい毎週のように煉獄の元へ通っていた刹那。
刹那が来ると分かった時の煉獄の顔と言ったら、他隊士に見せられるようなものではなく
以前庭先で2人が話している現場に出くわした時なんて、煉獄の緩みきった表情と刹那に注がれる熱のこもった視線に心底驚いたものだ。