第11章 拾壱ノ型. 無限列車
炭治郎にとっては、技の異常さよりも
煉獄を失わずに済んだということの方が大事な事だったからだ。
「じゃあ!これから先誰が死んでも、あの人がいれば生き返るって事?!」
考え込む炭治郎の横で興奮気味に言った善逸に、烟霞が首を横に振った。
「あれは誰にでも使える技じゃない。お互いがお互いに強く思いあっている者同士でなきゃ駄目なんだ。悔しいな、こんな状況で刹那様の最愛が杏寿郎だと知るとは。」
そう烟霞は笑う。
つまり刹那が行ったのは蘇生。
2人が言うには、死して直ぐ魂は黄泉の国へと歩き始める。
その魂に鬼神だけは干渉する事が出来、強い絆で結ばれているもの同士であれば魂を肉体に戻す事も可能なのだという。
通常は鬼神同士で使う事が多く今回の様な事例は極めて稀だ。
人間に使う場合、術者はその身に相手の致命傷を引き受けなければならないから。
「全く、無茶ばかりしてくれるよ俺達の姫さんは....」
困ったように眉根を下げ、紫苑は刹那の頭を撫でた。
やはりあの時、間違いなく煉獄は一度死んだのだ。
魂を引き戻すなど、鬼神の血を引く刹那がここに居たからこそ出来た芸当としか言えない。
もし刹那がここに居なければ、確かに煉獄の命はここで終わっていた。
自分達がなにも出来ず泣いている中、刹那だけは煉獄を諦めていなかったのだと思うと感謝と共に己の無力さを思い知らされる。
朝日が完全に現れてから程なくして到着した隠と胡蝶。
煉獄の鎹鴉が救援を呼んだのだろう。
治療を施される煉獄を遠目で見ながら、3人は拳を握りしめた。
強い決意を胸に秘めながら。
「もっと、強くなろう。二度とこんな思いをしないように...」
「うん。もうこんな気持ち御免だよ。」
「あったりまえだ!!ギョロギョロ目ん玉も言ってただろ!俺達を信じるって!!」
この一夜の経験は、3人をさらに高みへと連れていく出来事となる。
そしてそれは、鬼殺隊全体としても例外では無い。
しかしまずは、やっと訪れた休息の瞬間に身を浸らせよう。
長かった夜が開けたのだから。