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ナルシサス。【煉獄杏寿郎】

第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子



全部喋り終えて、幾らか軽くなった胸に思ったよりも張り詰めていたんだなと自覚したのも束の間、
一向に喋らない刹那に喋りすぎてしまっただろうかと不安にかられそろりと横に目を向ければ、





『...よく今まで妹を守り抜いたわ...炭治郎、貴方は優しい子。いい子ね、本当にいい子....』



慈しむように笑う刹那の顔。






「綺麗...」




ポツリと呟いた言葉は刹那に届かなかったのか、撫でる手は止まらない。



暫く撫でられて、うとうとと炭治郎の瞼が落ち始めたところで
2人の後ろに黒い影が現れた。



「刹那様、そろそろ部屋にお戻りください。」




声の主は烟霞。

どうやら一向に戻ってこない刹那を心配して迎えに来たらしい。


何年経っても彼の過保護は変わらない。
脇に抱えられた刹那の為の肩掛けと、余程急いできたのか少しだけ乱れた彼の髪がそれを物語っている。





「残念、今日はさよならね炭治郎。」



そんな烟霞の姿を見て無下にすることも出来ない刹那は、名残惜しそうに炭治郎の横から立ち上がる。







「あの!」



そのまま歩き出した刹那を炭治郎の声が引き止めた。


予想外の炭治郎の行動に少しだけ驚いたような表情の刹那が振り向き、




『どうしたの?』




「また、会えますか?」




優しく炭治郎に問いかければ、なんともまあ可愛らしい返事が返ってくる。




その言葉に面白くなさそうな顔をする烟霞を他所に、刹那はくすくすと笑って





『ええ。きっと。』




そう答え、今度こそ振り返らずに歩いていってしまった。



1人残された炭治郎は、刹那が座っていた場所を呆然と眺めながら

先程の己の発言に今更ながら恥ずかしさを感じる。





「っ....やってしまった。」





そこまで気にすることでも無いのだが、如何せん炭治郎は頭が固い。





「あんな事言って何がしたかったんだおれは....くっ、集中、まずは集中!!」






去りかけの女性を引き止めた上に、子供のような問いかけをしてしまった事を猛烈に反省しながら


炭治郎は再び全集中・常中の特訓へと勤しむのであった。

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