第9章 玖ノ型. 母襲来
(逢魔、この男がそうなのか...)
長い間待ち望んだ存在。
それが今目の前に居るのかもしれないと思うと、玉藻の心は踊る。
今ここで煉獄のその感情の名前を教えてやるのは簡単な事だが、それは野暮と言うもの。
意地悪な表情を浮かべながらまた一吸い煙を吸った。
本当のところ、玉藻は少し心配していたのだ。
今回の事を聞いて、鬼殺隊に刹那を推薦したのは間違いだったのかもしれないと。
しかし今の煉獄の言葉や、実際に柱達の目を見て
それは杞憂だったのだと分かった。
自分の判断は間違っていなかったと、今なら胸を張って言える。
「いい仲間を見つけたな刹那。」
ボソリと呟き目に見えて上機嫌になった玉藻に気づくことも無く、煉獄の刹那への賛辞続く。
玉藻はただずっと、噛み締めるように相槌を打った。
途中から玉藻と煉獄の刹那褒めちぎり合戦と化したそれは、玉藻が帰る早朝まで止まることはなかった。
思えばこの時から運命の歯車は回っていたのかもしれない。
刹那と、
鬼神と、
鬼殺隊。
そしてそこにもっと大きな歯車が加わるまで、それ程遠くない事を今はまだ
誰も知らない。