第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
自己紹介も終わり、刹那はにこにことしているが穏やかな空気を壊すように紫苑のお説教が再開してしまう。
やれ刹那は美しすぎるだとか、
警戒心が無いだとか、
もっと自分たちを頼れだとか、
褒めているのか貶しているのか分からない内容に煉獄は笑った。
「大体、俺達を呼び寄せる呪文。姫さん忘れてたでしょ?そこがまず論外です!」
聞きなれない言葉に煉獄は首を傾げる。
「呪文なんてものがあるのか?」
説教に夢中な紫苑の代わりに蛍清が煉獄の問いに答えた。
「俺達普段刹那の影の中からこっちの世界を眺めてるんだ〜。刹那がこっち側から影に命令すれば別の扉からこっちに来てお仕事するんだけどね、どうしても直ぐに俺達の力が必要な時は《鬼門解錠》っていう言葉か俺達の名前を呼べば強制的に召喚出来んの。」
「まあ今回は遅すぎた位だがな。」
蛍清に続くように朱嘉が皮肉を言う。
聞こえていたのか刹那がむっとした表情でこちらを睨んだ。
「では、今までの戦いや俺達の会話も筒抜けと言うことか?」
思ったことをそのまま口に出せば、うん!っと蛍清が返事をする。
下手な事は言えないななんて呑気に考える煉獄の耳に刹那の驚愕したような声が聞こえたのはその時だった。
どうしたのだというように、皆の視線が刹那に集まる。
はくはくと口を鯉のように開けた刹那がやっとの思いで言葉を紡いだ。
「母様が、来る。」
どうやら波乱は次々と起こってしまうらしい。