第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
10分程経っただろうか。
鬼神達の大号泣も落ち着き、刹那の目が煉獄へと向いた。
張り付いていた蛍清達を離して、
『杏寿郎。』
そう、煉獄を呼ぶ。
待ち人の呼び声に煉獄が逆らえるはずもなく、重い足を動かして刹那の目の前に座った。
『迷惑をかけてごめんなさい。』
そう開口一番言うものだから、煉獄はギョッとして刹那の肩を掴む。
「なぜ君が謝る!謝るならこちらだろう!!俺が、君を1人にしたから...君を守れなかったのは、俺なのに!!」
「そうだよ!どう考えたってあいつらのせいじゃん!」
煉獄を煽るように言った蛍清の頭を紫苑が叩く。
『ありがとう。そうやって私の事を考えてくれる人がいるから、私はまた立つことができる。今回は私も気が抜けていたんだと思う。』
「しかし!」
『だから、そう自分を責めないで。』
「っ...」
刹那の言葉に何も言えなくなった煉獄は、黙って下唇を噛む。
『過ぎたことはやり直す事は出来ない。貴方もよく分かってるでしょう?』
言う刹那に煉獄はしかしと続ける煉獄。
煉獄の心中を察してか、朱嘉が口を開く。
「俺達は俺達なりに奴らに罰を与えた。ケジメはついてる。お前が気に病んでも時は戻らない。受け入れろというのも変な話だが、お前はお前の出来ることをした。それでいいじゃねえか。」
それでも納得のいっていない煉獄に、ふっと笑いかけてから、
『さあ!辛気臭いのは終わりよ!まずはちゃんと自己紹介しましょう。』
パンと手を鳴らして明るく振る舞う刹那。
きっと煉獄に気を使ってだろう。
半ば無理矢理変えられた話題に、煉獄は申し訳なささえ感じる。
(不甲斐ない...)
そんな煉獄を他所に鬼神達は渋々と言ったように今更ながらの自己紹介を始めた。
まずは朱嘉。
「改めて俺は朱嘉。業火の一族の長だ。」
続いて紫苑。
「私は紫苑。毒の一族の長です。」
次に蛍清。
「はいはーい!俺は蛍清。海の一族の長してるよ〜。」
最後に烟霞。
「烟霞だ。霧の一族の長...」
「うむ...俺は煉獄杏寿郎。炎柱だ、よろしく頼む。」