第10章 きみの呪いが解けるまで
最近いつも以上にしつこくてうるさい五条は、誕生日プレゼントを催促しているのだろう。けれど、毎年欲しいものを聞いてもバカの一つ覚えみたいに"なまえ"しか言わない。結局去年も一昨年もそれを無視してみんなで特注ケーキをプレゼントしたのだけれど、なんだかなまえに対してだけは不服そうだった。そんなことを思い出しながら、シャワーを浴びなきゃいけないのに、疲れて体が動かない。しばらくだらだらとソファの上で転がっていれば、またドンドンと扉を叩く音がした。
『ああもう!本当いい加減にしろよ!!』
部屋の中からそう怒鳴れば、外から聞こえてきたのは硝子の声だった。
「なまえー、私ー」
なまえは慌ててソファから起き上がり、走って扉を開けた。扉の前に立っていた硝子に、なまえはパチンと両手を合わせる。
『ごめん硝子!悟だと思ったの!』
「あ、うん知ってるー。お前らのでけー声寮中に響き渡ってたから」
『………』
なんて恥ずかしい。女子寮中に醜態を晒した自分を心底恥じながら俯いていれば、硝子はそのまま部屋の中に入ってソファにどかっと腰掛けながら口を開いた。
「でもアイツホントすげーよな。あんだけなまえに振られ続けても諦めねーんだもん。マジメンタル鋼。つーかなまえもいい加減諦めて付き合っちゃえば?アイツがいる限りお前一生彼氏できないよ。なんでそんな頑に振り続けんの?まーでも相手があのクズじゃあな」
ぺらぺらと気怠げに話す硝子の言葉に、なまえはもごもごと答えた。
『……別に、振ってるつもりは、ないんだけど…』
なまえの口から出てきた言葉に、いつも気怠げに伏せられている瞳をこれでもかというくらい見開いてきょとんとする硝子。
「……は?マジで言ってんのそれ?」
『……だって、好きって一言も言われてないし…』
「え、毎日死ぬほど言ってんじゃん」
『言われたことないよ!?俺のものになってとかそういうことだけで、好きとか一回も言われたことないし』
「え、何お前まさかそれが理由で振り続けてんの?」