第10章 きみの呪いが解けるまで
冷たく粒立った空気が、爽やかな陽光を含んで冴え帰っている。
季節はもうじき、冬を迎えようとしていた。
11月の終わり。なんだか最近、やたらと五条がうるさい。否、うるさいのはいつものことなのだけれど、それ以上に、うるさくて仕方がない。
「ねぇなまえー」
「なまえー」
「なまえなまえなまえ〜~」
『あー、もううっさいな、なんだよ!?』
遂に痺れを切らしたなまえが、部屋の前で怒鳴った。五条がこうして部屋の前までついてくるのはいつものことだけれど、さすがに任務の後くらいはそっとしておいて欲しい。
「もうすぐ12月だよ」
『んな事知ってるよ』
「俺もうすぐ18歳」
『だから知ってるっつってんだろ!何度も何度も!』
「だって全然聞いてくんないじゃん」
『しつこすぎるんだよお前の誕生日アピール。もう、毎年毎年欲しいもの聞いても同じ事しか言わないし』
「だって欲しいもんなまえしかないんだもん」
『あーはいはい、それ聞き飽きたから。そう言って私を一生奴隷扱いしておきたいんだろ、マジで御免だね。はい退いた退いた』
「ほらそーやってすぐごまかす」
五条は不貞腐れたように口を尖らせると、なまえの頭の上に顔を乗っけながら続けた。
「俺のものになんないなら誰のものにもなんないで」
『はぁ?メンヘラかよ。つうか重い、頭退けて』
「俺の愛はいつだって重いよ。超ヘビー級の特級だよ」
『あーもーわかったから!』
呆れたようにそう言ってから無理矢理五条の頭を振り払うようにして部屋の中に入ると、なまえはガチャ、と大きな音を立てて扉を閉めた。ドンドン、としばらく扉を叩く音がしたけれど、今日はしっかりと鍵をかけて、五条が入ってこないように念のため続けて窓の鍵も閉めた。
ようやく静かになったところで、なまえはソファにごろりと寝転がる。