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【呪術廻戦】廻る日の青

第1章 もしも運命があるのなら





『隣歩くんじゃねえよクソメガネ』

「あ、いたの?小さすぎて見えなかった。ていうかメガネじゃねーしグラサンだしオマエ頭だけじゃなく目も悪いの?」


目的地へ向かう道中ですら、二人の口喧嘩は止まらない。正直ここまで相性が悪いとは、計算外だった。夜蛾はこの二人を組ませた事を少々後悔しつつも、親睦を深め互いの実力を認め合うチャンスだと無理矢理心に言い聞かせながら道を進む。

ぎゃあぎゃあと五月蝿い一年達を引き連れて、目的地の病院へと辿り着くと、夜蛾は生徒達に向き直る。


「先日、この病院内で患者が失踪した。被害者は三名。恐らく自然発生した呪いによるものだろう。患者が呪いに拐われた」


大勢の思い出になる場所には、呪いが吹き溜まる。
学校や病院等は多くの人間に何度も思い出されその度に負の感情の受け皿となる。それが積み重なると、このように呪いが発生するのだ。


「呪いを祓い、患者を救出。死んでたら回収。いいな。―――"闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え"」



ドドドド、と不気味な音を立てて、病院の周りが暗く夜になっていく。夜蛾によって降ろされた"帳"によって、辺りは暗闇に包まれた。


「任務を遂行したペアにはご褒美、先を越されたペアにはペナルティだ。それじゃあ死ぬなよ諸君!」


夜蛾はそう言い残すと、帳の外へさっさと出て行ってしまった。


「行こうか家入」

「ああ、ペナルティくらうのは御免だからね」


そう言ってさっさと病院内に消えて行ってしまった夏油と硝子の後ろ姿を目で追っていれば、ぬっと視界が黒く遮られた。


「行かねぇの?」


見上げるほど背の高い五条の、綺麗な白髪がふわりと揺れた。サングラス越しに見える青い瞳は、その髪と同じ真っ白の長い睫毛に囲まれている。


『言われなくても行くよ。入学早々アンタなんかとペナルティをくらうのは御免だし』

「あっそ。足引っ張んなよ」

『どっちが』


憎まれ口を叩きながらも、二人は肩を並べて病院内に足を踏み入れる。如何にも不気味で不穏な空気が、空間を支配していた。ガラン、とひと気の無い病院は、まるで心霊スポットだ。

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