第6章 りんどうの唄
外を吹く風は冷たく、気温は十二月にしては随分低かった。
空は仄暗く、雪でも降ってきそうな気配が満ちている。
朝だから暖房がまだ効いていないのか、身体を震わせながら教室に入れば、自分の席と、右隣の席が空いていた。
「悟、八分の遅刻だ。責めるほどでもない遅刻癖をなんとかしろ」
「責めるほどでもないならいいじゃん」
夜蛾の言葉を聞き流して、五条は自分の席に座る。
「ねぇ、なまえは?遅刻?」
左隣の夏油に問えば、夏油は小声で答えた。
「今日は休みだそうだ」
「休み?なんで?アイツ馬鹿なのに風邪引いたの?」
「いや、用事があるらしい」
「…ふーん」
五条は頬杖をついてから、ちらりと右隣の席を見る。いつも隣にいる筈のなまえがいないせいか、その日はなんだか余計に寒く感じた気がした。