第5章 眩しい光
「あー、暇」
自分の部屋に戻れば、聞き慣れた声がした。
何故か勝手に人の部屋のソファを堂々と一人で陣取っている五条を、この部屋の主であるなまえはじとりとした視線で睨み付ける。
「つぅかこのソファ狭すぎ。まぁオマエの足の短さじゃ仕方ないよね」
――授業を終え、放課後。
硝子の部屋で話をしてから自身の部屋に戻ってきたら、五条は当たり前のように其処にいた。勝手に入ってこられるのはしょっちゅうなので気にはしていないけれど、勝手に入ってきて、ソファを占領しながら菓子を食い散らかしている癖に、なんて言い様だろうか。心底腹立たしく思いながら、彼の発言を無視してなまえはすたすたと部屋に入ると冷蔵庫を開けてコーラのペットボトルを取り出した。コーラをコップに注いでいれば、五条がぽつりと言った。
「オマエの部屋ってさ、物少ないよね」
五条の言葉に、なまえは面倒臭そうに口を開く。
『別にいいだろ、ほっとけよ』
「もっと女子っぽい部屋にしろよ、女子の部屋に来た感ねぇじゃん」
『そんなモン私に求めんなよ。物なんて増やしたって仕方ないだろ、呪術師なんていつ死ぬかわかんないんだから」
素っ気なくそう言うなまえを、五条はじっと見つめてから、やがてふいと視線を逸らして続けた。
「早くコーラ持ってこいよ」
『いやこれお前のために注いだんじゃないんだけど』
「俺お客様だよ?もてなせよ」
『勝手に入ってきて何がもてなせだよ、喉乾いたなら帰れ』
「あー今日もなまえが冷たい」
『優しくされたいなら言動と態度を改めろ』
冷たくそう言い放って、なまえはコップに注いだコーラを一気に飲み干した。そんな姿をじーっと見つめている五条になんだか若干の気まずさを感じて、なまえは渋々もう一つのコップにコーラを注ぐ。