第4章 繋ぐ日の色
季節は秋。
ようやく蒸し暑い夏も終わり、肌寒くなってきた頃だった。
なまえは今日も飽きずに、組手、即ち人対人の対術師戦闘を想定した格闘訓練をしていた。訓練とはいえ、今のところなまえが五条に向かっては投げられ、向かっては投げられを繰り返している段階。
『あー、クソ。なんで一本も取れないかな』
身体を起こし、制服についた木の葉を払いながら、なまえが呟けば。
「ピンクだな」
「いや白だろう」
こそこそと耳打ちする五条と夏油の声がした。内容は言わずもがな、何を指しているのか鈍感ななまえにだってわかる。
『この変態!!』
「うわ地獄耳」
憎たらしく顔を歪める五条に再度向かっていくなまえの打撃を捌き、難なく受け流しながら五条は言った。
「で、実際のトコロどっち?」
『教えるわけねーだろこのクズ!』
「いいじゃん減るもんじゃないんだし。でもさーもうちょっと色気あるパンツ選んだ方がいーんじゃない?」
『~~っ殺す!!』
なまえは左右のフェイントを織り交ぜて勢いよくアッパーを試みたが、五条は難なくそれを躱すと、長い足でなまえの細い足を払う。
軸足を崩されたなまえはくるりと回転して倒れたが、身体はしっかりと受け身を取った。受け身が取れるようにはなったけれど、一本取るまでには程遠い。地面に倒れ込んだなまえは、背中の痛みをじんじんと感じながら、空に向かってため息を吐いた。
澄み渡るような秋の空をぼけっと眺めていれば、視界が見慣れた顔で遮られた。
「いつまで寝てんだよ、殺すんじゃなかったの?」
『…うるせぇ』
にやにやと覗き込む五条にそっぽを向けば、大きな手が差し伸べられた。夏油の手だ。その手を掴んで起き上がれば、夏油は言った。
「もう少し筋力をつけたらどうだ?華奢すぎる。ちゃんと食べてるのか?」