第1章 もしも運命があるのなら
「……傑」
「どうだった、彼女」
友の問いかけに、五条ははあ、とため息を吐いた。
「どーもクソもねーよ。見てたんだろ、バレバレ」
「夜蛾先生の指示だ、許せ。彼女の実力をある程度知っておきたかったんだろう」
「もっとうまいやり方しろっての、あの脳筋」
「まぁでも、なかなか良いコンビだったんじゃないか?悟にしてはうまく連携もしてたし」
「…連携じゃねぇよ、俺が合わせてやってたの」
「悟が誰かに合わせるなんて、それこそすごいじゃないか。やるね、彼女」
「どこが。どんくせぇし偽善者だし生意気だし……まぁ、でも」
―――"『自分に助ける力がある事を、忘れてしまう事だと思う』"
脳裏に彼女の言葉が浮かぶ。
五条は夏油に何か言いかけて、何かを思い出すようにして一度口を噤んでから、続けた。
「……なんでもね。あー疲れた、飯行こうぜ飯」
「はは、そうだな」
言いかけた言葉の続きは、いつか聞けるのだろうか。そんな事を思いながら、夏油は五条の背中を追ったのだった。