第1章 もしも運命があるのなら
なまえの言葉に、五条は一瞬驚いたような顔をしてから続ける。
「バレた?結構マニアックな映画のセリフ厳選したつもりだったんだけど」
『まぁ確かにマニアックだけど、良い映画だよね。あの台詞には私も痺れたな』
少しだけ嬉しそうにそう言うなまえに、五条はきょとん、としてから続けた。
「……オマエ映画とか見るんだ」
『まぁね。それくらいしか”させてもらえること”なかったから』
「………」
ぼそり、と小さくそう呟いたなまえの横顔はどこか儚げで。さっきまでの生意気な態度はどうしたんだよ、と言いたくなるくらい弱々しく見えた。何か声を掛けようと五条が口を開けば、それは硝子の声に遮られた。
「なまえー、お疲れ!」
『……家入さん』
駆け寄ってきた硝子は、勢いよくなまえの肩を抱いた。
「硝子でいいよ。私もなまえって呼ぶし」
『…しょ、硝子……』
「お互いクズと組んで疲れたろ?てコトで一服いかね?」
『…一服?喫煙は二十歳になってからじゃ』
「いーのいーの、ほら早く」
嵐のように半ば無理矢理なまえを連れ去っていった硝子。茶々をいれる間もなく遠くなっていく二人の後ろ姿を眺めていれば、後ろで名前を呼ぶ声がした。
「悟」