第13章 雨後
「でもしごきも交流会も意味ないと思ったら即やめるから」
「同じく」
「ハッ。まあこん位生意気な方がやり甲斐あるわな」
「おかか」
睨み合うように向かい合う一年生と二年生を見つめながら、なまえはふっとほほ笑む。
『話はついたね。それじゃあ私は行くよ』
「え、なまえさんもう行くの?しごかれるなら私なまえさんがいいんだけど」
口を尖らせる野薔薇に、なまえはにこにこと笑いながら続ける。
『私にしごかれたいなら、まず二年生から一本取ってからね。その後私から一本取れたら、欲しいものなんでも買ってあげるよ』
「マジで!?なんでも!?」
『うん、女に二言はない。シャ◯ルでもヴィ◯ンでもなんでもどうぞ』
にこやかにそう言うなまえにきらきらと瞳を輝かせる野薔薇。そんな二人を横目に、真希がうんざりした顔で言った。
「言っとくけど、希望持つだけ無駄だかんな。なまえさんから一本取れた奴なんて今まで一人もいねえから」
「え」
「しゃけ」
『君達から第一号が出ることを祈ってるよ。それと、』
にこやかに微笑みながら、なまえは行こうとする足を止め、振り返る。
『京都校に負けるなんて事は許さないからね♡』
そう言って微笑むなまえの底知れない笑顔に、その場にいた五人の背筋が凍る。
ひらひらと手を振りながら遠くなっていくその背中を見つめながら、野薔薇がぼそりとつぶやいた。
「え、何今の、こわっ。負ける気ないけどこわっ」
「なまえさんああ見えてすげえ負けず嫌いなんだよ。京都の学長とは仲悪いし尚更OGとして東京校が負けるなんて許せねえから毎年気合い入ってんだ。って事でなまえさんにしごかれてぇならまず私らにしごかれな」
「しゃけ」
「望むところよ」
雨の後に、紺青色の晴れ間が差す。
雨の匂いを、残したまま。