第12章 StrawberryMoon
「じゃあもっと優しくしてーもっと俺を愛してー」
言いながら五条はぐりぐりと頭を胸になすりつけてくる。本当に、こういう姿を見ていると子供みたいだなとなまえは思う。ようやく靴を脱いでシュークローゼットに靴を仕舞ってから、なまえは口を開いた。
『はいはい、ちゃんと愛してるよ』
そう言えば、五条は顔をあげるとにやりといたずらに口の端をあげた。
「じゃあ何してもいいよね」
そう言って五条は、なまえをどん、と壁に押し付けた。やっと部屋の中に入れたばかりだというのに。
五条は黒い目隠しをしゅるりと首まで下げる。さらりと真っ白な髪がその白い肌に降りてきて、美しく光る青い瞳がなまえを射抜く。愉しそうににやけた五条の顔で視界がいっぱいになったかと思えば、あっという間に唇を塞がれ、そのまま口内に生温かい彼の舌が侵食してきた。歯列をなぞるように舐めてから、舌が絡んでくる、瞬間。なまえは思い切り五条から顔を離した。
『…んっ、!ちょっと待って、ご飯とお風呂は』
「そんなん今どーでもいーよ」
『よくないっ、どいて』
「無理」
抵抗しても無駄だと言わんばかりに顎を親指と人差し指でぐい、と掴まれて、再び彼の唇が降ってきた。もうこうなってしまえば、彼をとめることはできない。大人しく従う以外の選択肢なんてない。抵抗しながらも半ば諦めてそのままキスを続けていれば、そっと唇を離した五条が言った。
「嫌がってるなまえって可愛いよね。そそる」
『…この前は全然別のことでそそるって言ってなかった?』
「どんななまえも可愛いって話」
愉しそうにそう言ってから、再び唇を塞がれた。ゆっくりと彼の舌が口内を撫でた。応えるように遠慮がちに舌を絡めれば、そのまま舌を甘噛みされた。
徐々に深みを帯びていくキスに、息が荒くなる。口のなかが舌で溶かされてしまうんじゃないかなんて思うようなキスをしながら、五条はなまえの腰を抱き寄せた。薄目を開けてみれば、余裕そうに嗤う五条の熱っぽく潤んだ青い瞳と目があった。どくり、と心臓が鳴って、慌てて目を閉じる。
「…かわい」
小さくそう吐いた彼の声に、身体が熱くなる。