第1章 「嫌だって、言ったのに」【我妻善逸】
「俺はね、」
「…うん?」
「ずーっと、お前のこと女の子だと思ってたわけですよ」
「え?」
「それを何?急に紅なんか差し初めて?
しまいには宇髄さん?なにそれ。お前の紅を付けた姿を最初に見てないとか嫉妬で可笑しくなるかと思ったわ、どうしてくれんの 」
「ちょ、ちょっと待って…」
「俺、ちゃんと釘刺したのにさ?言う事聞かないでそんな色っぽい紅付けてきたお前なんなの?
宇髄さんが選んだってのがほんとだめ、簪もどうせなら俺が選びたかったのに」
「ぜ、善逸………!!」
「まぁ、つまりこれはお前が悪いよ」
言いたいことも、反論したいことも沢山あった。
でもそれら全部、善逸の口に吸い込まれるようにして消えていった。
逃げようとしても後ろは壁で。
善逸ってば逃げれないようにわざわざ壁際まで寄せたのかなぁ?だとしたら確信犯だしこいつはなかなかのやり手の男だよ。
貪るように口付けられて、善逸が離れたときには、彼の唇にも紅が移っていた。
「ほら、やっぱり接吻のあとの紅って凄い唆られる」
あちこちに伸びてしまったであろう紅を見て、恍惚と怪しく瞳を光らせた善逸を見て私はただただ頬を赤くするだけだった。
…あ、宇髄さんが言っていたあいつって。
「ん、もう1回いいでしょ?顔上げて?」
善逸のことだったのかぁ。
ちょっとした好奇心で紅を付け始めただけだったのに。
私はきっともう、善逸をただの同期としては見れなくなるのだろう。
顎を掬われ、大人しく顔を上げ瞼を閉じれば「良い子」と善逸がそれはそれは甘い声で囁いた。
***
fin