第1章 「嫌だって、言ったのに」【我妻善逸】
世間一般でいう年頃の女子というのは、
太陽の光を浴びてきらきらと輝く簪で可愛らしく髪を結っていたり、綺麗な着物を着てお洒落を楽しんでいたり、はたまた口に紅を差して色付き始めたり。
やはり身だしなみを気にしている、しっかり可愛い子のことを言うのだろうか。
任務帰り立ち寄った街を行き交う同年代の少女達と自分を見比べてその差に思わずくらっときた。
かく言う私はどうかというと。
ところどころ縫い直した跡がある鬼殺隊隊服ははしたなくも動きやすさを重視して裾の短いスカートですし、髪はもうずっと伸ばしっぱなしで特に何のこだわりもない組紐で適当に結っていますし、唇は勿論手を肌も万年睡眠不足昼夜逆転鬼退治生活のせいで荒れ果てている。
今の私で可愛いところと言ったら、師範に貰った羽織くらいではなかろうか。
一応は髪も、女の命と言うくらいだからお手入れを疎かにしているつもりは無いがお世辞にも美しい艶のある髪だとは言えない。
「…こんなんだから善逸からの扱い私だけ伊之助並に雑なんだな…」
同じ死線を潜り抜けてきた同期の1人、我妻善逸。
失礼かもしれないが、彼は所謂女好きだと思う、というか絶対そうだ。
任務先で出会う女の子はもちろん、隊の女の子、蝶屋敷の女の子(まだ幼い子も含む)、極めつけは鬼の禰豆子ちゃんにまで、だらしなく鼻の下を伸ばしてでれでれし始める。
一部女の子からは気味悪がられてるし、見境なく求婚するから五分五分くらいの確率で相手の女の子から平手打ちをされている。うん、正当な判断だよね。
じゃあ私は?
同じ同期のカナヲちゃんや禰豆子ちゃんにはでれでれするくせに、何故か、私が何をしたというのか、
炭治郎と同じくらいというかむしろ伊之助と同じくらい雑な扱いをされる。
極めつけは「お前の方が強いんだから俺のこと守ってくれよぉ!!」って盾にされた。
これは許さない、本当に許さない。殴り飛ばしてやろうかと思った。
別に嫌だというわけではないが、快いものでもないのである。私が善逸に特別な想いを抱いてるとかそういうわけではなく、単純に、腹が立つ。
刀振り回して鬼の頸を斬ってはいますがね、私だって一応は年頃の女の子なんですよ。
そうだ、見返してやろうか。
店先でふと目に入った艶っぽい赤色の紅を手に取った。
