第12章 必殺技と回復魔法
「クライブ、手加減するなよ
全力で行け!」
ディアスが何故か嬉しそうに命令している。
どう見積もっても俺の方が分が悪いな。
(…逃げるか?)
しかし、見物を決め込んだ団員達が周りを取り囲んでいて這い出る隙間もなかった。
「猫左衛門、お前も手を抜いたら怪我じゃ済まないぞ」
「あはは…、そりゃあ、あのパワーじゃ…な」
クライブの素振りが尋常じゃない風切り音を出している。
「…ティアナ、持っていてくれ」
俺は暁丸をティアナに預け、木剣を手にした。
「始めっ!」
ディアスの掛け声で試合が始まる。
(覚悟を決めるしかないか…)
「うおおおおぉぉぉぉっ!」
クライブが雄叫びと同時に斬りかかってきた。
スピードでは俺の方が上、素早く後ろに飛び退いた。
「ま、まじっ!?」
クライブは一撃をかわされたと瞬時に判断し、すかさず二撃目の踏み込みに入っている。
「逃がさん!」
鬼気迫る形相のクライブ、いくら木剣でもあんなパワーをまともに食らったら一溜りもないな。
「ちっ!」
更にバック転で難を逃れる。
「…さすがに素早いな」
クライブは木剣を構え直す。
「どうも…
それじゃあ、反撃させてもらおうかな…」
獣人パワーを使って、スピードでクライブを翻弄する。
それでも…。
「そこっ!」
クライブの木剣が唸りを上げて迫る。
「やばっ!」
横に払われた木剣を掻い潜る様に避ける。
すぐに距離を置いて一息吐く。