第3章 幻覚ヒーロー
合同夏合宿、三日目。
あの日から月島も加わった第三体育館組の自主練は、今日も騒がしく(主に木兎が)始まっていた。
「――お?ツッキー、今日は仲間連れか?」
木兎から掛かった言葉に、月島が「はい?」と聞き返せば、第三体育館の入り口からひょっこりとこちらを覗いている日向の姿が視界に入った。
「?相棒はどうしたのさ」
「影山はまた一人で練習!研磨にトス上げて貰おうとしたら5本で逃げられた!」
日向と月島の会話に、なまえと黒尾が驚いたように続く。
『研磨が自主練に……!?』
「研磨が5本も自主練に付き合っただけでも凄ぇぞ」
そして、日向がすぅと息を吸う。
「――だからおれも入れてくださいっ!!」
日向独特の、男子にしては甲高い大きな声が第三体育館に響く。
そんな日向の申し出に、黒尾はニッと笑ってから口を開いた。
「じゃあ…人数丁度いいから――」
「「?」」
「3対3やろーぜ」
黒尾の言葉に、はしゃぎ倒す日向。
しかし、わけがわからないといった顔で月島が口を開いた。
「え。一人、足りなくないですか」
「ん?丁度6人いるじゃねーか」
黒尾の言葉に月島は眉を顰めた。
黒尾、木兎、赤葦、日向、自分…どう見ても”選手”は5人しかいない。まさか、と思いゆっくりと首を回せば、にこにこと笑いながら人差し指で自分を指差しているなまえと目が合った。
「エ」
月島の気の抜けた声に、日向が続く。
「うわァァァーーっっ!!なまえさんがいる!!」
目をきらっきらと輝かせながらなまえのことを見つめている日向に、月島は我に返った。
「日向、うるさい」
「あっごめんつい…!!」
『日向君よろしくね~』
「ふぁっ…!!ふぁいッッ!!」
なまえから掛かった言葉に、顔を真っ赤にして間抜けな返事をした日向に月島はひとつため息を吐いた。