第2章 太陽と月の出
――二週間後。
梟谷グループの夏休み合宿は毎年、埼玉にある森然高校で行われることになっており、今年も早朝から各校が森然高校に集まっていた。
準備を終え、五校がアップを終えた真夏の第一体育館は、早朝とはいえすでに十分暑く、日中の地獄を予感させる。
日向は練習のストレッチをしながらキョロキョロと辺りを見回し、この夏二度目の遠征に上がりきったテンションを隠しきれずにいた。走り、跳び、打つ選手たちは、誰も彼もが自分より強そうに見える。それもそのはず、残念な事実だがこの五校の中で一番弱いチームが烏野なのだ。7月の週末合宿でも、その力の差は歴然としていた。
しかしそれはつまり、ここにいる全員から技を学び、盗むチャンスであるということだった。烏野は新しい変化を求め模索している最中であり、この合宿中は一分一秒でも無駄にはできない。そう思うと、日向は期待で体が疼くのがわかった。
「よーしッ、やるぞ!!」
気合いっぱいの声が、第一体育館に木霊した。
合宿の内容は、7月と同じく5校でローテーションを組む練習試合がメインだ。コートを二面使って同時に二試合を行い、残った1チームは主審や副審、そして得点係などのサポートを担当する。負けたチームには厳しいペナルティもあり、いやでもバレー漬け、練習漬けの1週間を送ることになる。そのうえ、さらに自主練を行う者なども少なくはないというのだから驚きだ。
合宿初日の練習は、烏野の全敗。
今回のペナルティである”森然限定、さわやか裏山新緑坂道ダッシュ!”を何本も終えた烏野のメンバーは、他のチームよりもだいぶ疲れている様子だ。
日が完全に暮れ、本日の練習は終了。ここからは、各自の自由時間だ。
「はー、見事全敗かー」
「いっそ清々しいなぁ」
「こんなにダッシュしたのは鳥養監督の時以来っすね…」