第6章 06. 水の呼吸
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呼吸が乱れ息が苦しい。走る速度も遅くなり足が鉛のように重く感じる。
『はぁ・・・はぁ・・っ!』
「遅い!!」
鋭い瞳に圧倒され唾を飲み込む。
『ーーーっ』
私は水柱の継子として鱗滝さんと義勇さんに鍛えられた。最終選別で死なない為に鍛え抜くのだ。毎日霧が濃く他と比べて遥かに空気が薄い山を駆け抜ける。山には鱗滝さんが仕掛けた罠が多数存在しており鬼殺剣士候補の修行の場となっているらしい。その罠を避けながら山を駆け抜ける。呼吸が乱れ、酷く苦しい。倒れそうになるが殺された両親の事を思い出しては立ち上がる。
ーーー強くなりたい。誰かを守れる存在になりたい。
数ヵ月間、鱗滝さんと義勇さんに鍛えられ体力と筋肉が付き刀の使い方と呼吸法も教わった。義勇さんは著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで瞬間的に身体能力を大幅に上昇させ鬼と互角以上の剣戟を繰り出す“全集中の呼吸”を用いて鬼の頸を狩っているそうだ。
『・・・全集中の呼吸』
「そうだ。全集中の呼吸を使用し、流派に従った型から剣戟を繰り出し、鬼と対峙する」
義勇さんは腰に掛けている鞘から刀を抜いた。刀の色は深い水色で彼が“水の呼吸”に高い適性を有している事を示している。
「拾壱ノ型 凪」
ーーーポツン
水が落ちたような音がしたと同時に無風の海面が現れた。彼は刀の届く範囲内に入った対象物を縦横無尽に斬り刻んだ。
『ーーーっ!』
余りの美しさに思わず声を失う。これが鬼殺隊の隊士。中でも“柱”と呼ばれる最上級剣士の強さなのだ。
「今のが全集中の呼吸を駆使した技だ」
『・・・凄い』
私も鍛えれば義勇さんと同じ技が使えるのかと期待から目を輝かせて彼に近付くと一瞬だけ微笑んだ気がした。
「あぁ・・・いつかな」
『頑張ります!』
水の呼吸の型は、その名の通りどんな形にもなれる水のように変幻自在な歩法が特徴であり、それによって如何なる敵にも対応できるらしい。私は鍛練に励んだのだった。