第5章 この手を掴んだら、最後【R18】《不死川実弥》
「不死川さん、起きて下さい」
ゆらゆらと肩を揺らせば彼は重い瞼を開けた。
「朝ですよ。女将さんが、朝御飯を作ってくれましたよ?」
「あァ…」
まだ眠気の覚めない彼は布団の上にうつ伏せになり頬杖を付いて、横に座っている私を見た。
「…お前には、余韻ってもんは無ェのか?」
彼より早く起きて、既に隊服をきっちりと着こなした私が、彼はどうやら不服らしい。
「…だって朝には此処を出るって話だったじゃないですか…女将さんにも悪いですし」
何で私がこんな言い訳めいた事を言わなければならないのか。
だいたい、私は彼よりも早く起きて、寝ぼけて抱きしめてくる彼の腕に抱かれながら
寝顔をまじまじと眺めたりしてしまったのだ。
…決して余韻に浸らなかった訳ではない。
そこまで思い出して頬に熱がこもるのを感じる。
「なァ、身体は平気なのか?」
「あ…平気ですよ…」
まだナカに彼が入ってる様な違和感みたいなものはあるけれど、そんなの口に出せる訳が無い。
昨夜を思い出して更に頬が熱くなった気がする
悟られたくなくて視線をそられば、彼の指が頬に触れる。
「不死川さ…」
するりと耳に触れた指先が、耳の外側をなぞるからピクリと身体が震える。
「あー…ついに、手ェ出しちまったな」
後頭部に手が回されてぐいっと彼に引き寄せられた。
吐息が届く距離に彼がいる。
私を見つめる彼は
いつも、こんなにも甘い顔をしていたのか。
過去の自分に言ってあげたい
彼の事をこんなにも好きだって事。
end