第2章 夢を見ていたい。
「どけ!!」
この声は…
伊之助!?
「刀抜いて戦えこの弱味噌が!!」
そう思うと一気に血の気が引いてきた。
鬼ではなさそうだ。
となると、誰かをいじめているか、誰かに戦いを挑んでいるかしかない。
「伊之助!」
外へと飛び出すと、予想的中。
それも、思ったよりも酷かった。
「ちょっと伊之助、聞いてるの!?いじめちゃだめでしょ!」
黄色い髪をした子は、伊之助に蹴られ殴られでぼろぼろになっていたのだ。
凛はとっさにその子を守る体制に入った。
「っ…!」
痛みが走った。思わず顔をしかめる。
守ろうと前に出たことで、伊之助の蹴りが腹部に直撃したのだ。
「おまえ…この女の子に今何をした…」
その子は、さっと凛を後ろに隠した。
10cm以上の身長差、あるだろうか。
凛はすっかり隠れてしまい、伊之助の姿は見えなくなった。
「女ァ?そんなんどこにも…」
「女の子にこんなことする奴は許さない。鬼のことも、俺が直接炭治郎に話を聞く。だからおまえは……引っ込んでろ!!」
おお、ちょっとかっこいい。
伊之助が刀をあげようとした瞬間、黄色の髪の子でも、凜でも、伊之助でもない声が響いた。
「やめろ!」
バキッという痛々しい音と共に、伊之助が宙へと浮いた。
そこからはもうじゃれ合いというのか、伊之助の一方的な攻撃というのか。
「ごめんね、伊之助がひどいことしちゃって…」
凛は黄色の髪の子の傷口を優しく拭いてあげた。
「えええええぇぇ!女の子に拭いて貰えるなら傷なんていくらでも作るよ!!」
その子は「えへへぇ」とくねくねしながら凛に抱きついた。