第2章 夢を見ていたい。
「待ってくれ。ちょっと待ってくれないか!」
善逸のその声に、先頭を走っていた凛と炭治郎、そして2人を追いかける伊之助の足が止まった。
「善逸、どうしたんだ?」
「気分でも悪いの…?大丈夫?」
何だか少し顔色も悪いように見える気がする。
どうしたのだろうか…。
「怖いんだ!目的地が近づいてきてとても怖い!」
善逸はぽろぽろと涙を流しながらそう言った。
「何座ってんだこいつ…気持ち悪ぃ奴だな」
「ちょっと伊之助、そういうこと言わないの!」
「なんで凛はいちいちそんな弱味噌の味方すんだ!」
凛が善逸を庇うと、伊之助はいかにも不機嫌そうな顔をした。
「みんな、目の前のあの山から何も感じねえのかよ!」
薄暗くて気味が悪い。
怖いと感じる善逸の気持ちも分かる。
だが、凛は自分の怖い気持ちよりももっと強いものを感じていた。
肌にひしひしと突き刺さってくるような強い感情…
「しかしこんな所で座り込んでも…」
「やっぱ気持ち悪ぃ奴だ。凛、庇うことねぇよ。」
「気持ち悪くなんかない!俺は普通だ!お前らが異常なんだよ!」
「何だこの匂い…」
突然、炭治郎が走り出す。
「寂しい、色が見える…とても強い、悲しい色…」
なんだろう。
こっちまで辛くなってくるほど寂しい色。
寂しいでは収まらなくて、辛くて、だから恨んで…。
「炭治郎!凛!俺を1人にしないで!」
炭治郎と伊之助に続いて踏み出そうとした足が、その声で止まる。
「善逸、私言ったでしょ?善逸は強い。戦えるの。そんなに自分が弱いと思わないで。」
「凛ちゃんの事は信じてるよ、でも俺は強くなんて…」
こんなにも強い、という色が見えるのに。
どうしてその色が隠れてしまうのだろう。
「善逸なら出来るよ、大丈夫。」
そう言って、凛はぎゅっと善逸を抱きしめた。
「生きて、後で会おう。」