第10章 再会が必ずしも良い事とは限らない
しかしその後、結局あの変な胸の動悸のせいで二度寝する気になれなかった私は自室を通り過ぎそのまま食堂へ向かった
大抵この時間の食堂には朝早くから仕事や任務のある隊士たちが多い
席はどこもガラッとしていたが、今はあまり誰かと話をしながら食べる気分じゃなかった為、私は敢えて端の方の適当な席にひっそりと座った
しかし次の瞬間、
「ぁあ!大石さんじゃないッスか!!」
その声のデカい人物は私を見つけるなりササッと席を移動し私の向かいに座った
『お、おはようございます神山さん…』
最悪だ、とんでもない人に見つかってしまった。
「今日は珍しく早起きッスね!何かあるんッスか!?」
『えっと…別に何も』
「いやでも…はッ!もしや…沖田隊長と2人っきりで朝まで…」
『神山さん…何度も言ってますけど私と隊長はそんなんじゃないですよ』
「え、違うんッスか?」
神山さんの言葉に私ははっきりと首を縦に振った
『確かに沖田隊長は仲間思いで見た目もカッコよくて、強いし…尊敬もしてますけど…腹黒で意地悪で私のことは雌ブタ扱いだし、何かにつけてすぐパシらされるし…彼も私もお互い仲間意識はあってもそれ以上は…ないですよ』
「…でも沖田隊長はそうは思ってないかもしれないッスよ」
『え?』
「だって隊長がそんなに大石さんに構うのは…ガハッ」
神山さんが何かを言いかけた次の瞬間、何処からかお盆が物凄い勢いで飛んで来て神山さんの頭にクリティカルヒットした
『か、神山さんんんん!?大丈夫ですか!しっかりして下さい!』
倒れた神山さんの傍に駆け寄り、体を起こし呼び掛けるが彼は既に意識を失っていた
「あー…悪ィ悪ィ。寝起きで腕が攣ってたもんでねィ、手が滑っちまったー」
『お、沖田隊長…!』
ど、どうしよう…。
さっきのことがあってか隊長の目が見れない。
不自然な態度にならないように私はサッと元の席に座った
変な緊張で落ち着かない私とは反対に沖田隊長はいたって自然に私の隣に座り、持ってきた朝食を食べ始めた
横目で彼を見つめていると丁度目が合ってしまい慌てて逸らした
「オイ…さっきから何横目でジロジロ見てやがんでェ」
『え、べ、別にジロジロなんか…』
「言っとくがこの飯は俺のでィ、んなに見つめてもやらねェぜ?」
『全然違います!!』