第9章 何気ない事で人の心は動かされる
女らしくなれって言ったり、女だから弱いって言ったり
『どっちなのよー!!』
「どうしたんだい結衣ちゃん?」
縁側で叫ぶ私にたまたま通りかかった近藤さんが心配そうに駆け寄ってきた
『局長…すいません、ちょっと嫌な夢見ちゃって…』
「夢…。あ、寝てた?もしかして寝てた?」
『ちゃんと書類整理は終わりましたよ』
30分も経ってないと思ったのに実際はもう昼から3時間も経っていた
『そういえば、ホシの件はどうなりました?』
「あぁ、さっきトシ達から任務は成功したって連絡があったよ。ただ、ちとホシの野郎が抵抗して暴れたらしくてな、後処理にまだ時間がかかるみてーだ」
私は近藤さんを見つめ、そっと俯いた
『…誰も、怪我とかしてないですか?』
「…」
何も答えない近藤さんに私は一瞬嫌な汗を掻いた
刀をぎゅっと握り締め、震える私の頭に近藤さんはそっと手を乗せた
『…』
「結衣ちゃん」
名前を呼ばれ顔を上げた私に近藤さんはパチンっとデコピンをした
「なんてな!あいつらなら大丈夫だよ。結衣ちゃんは心配性なんだから」
キョトンとする私を見つめ近藤さんは笑った
「確かに結衣ちゃんが心配する気持ちもわかる、今朝のトシには納得出来んと思っただろう。でもきっとトシは結衣ちゃんを危険な目に合わせたくないんだよ」
『でも、私は隊士です。…危険は覚悟の上なのに…』
そう言うと近藤さんは少し困ったように笑った
『…やっぱり局長も副長も、沖田隊長もみんなどこかで私を女だからって特別扱いしてます』
どれだけ強くなっても、私には"女"という絶対に越えられない壁がある
「それだけじゃないよ」
『え?』
「大切だからさ」
近藤さんの言葉に私は目を見開いた
「大切だから…傷つくところを見たくないんだ。あの日みたいに…」
『…』
「結衣ちゃん、お前は女の子でいいんだよ。どんなお前でも俺たちにとっては大切な護る価値のあるモノに変わりねーんだからな」
そう言って微笑むと近藤さんは立ち上がり縁側を後にした
"大切だから"
それは…私だって同じ気持ちですよ。
みんなが大切で大好きだから…力になりたい
けれど彼らも私と同じ気持ちだから
想い合っていても…結局すれ違ってしまうんだ。