第1章 人に豚とか言うのは失礼だ
昼下がりの公園のベンチに2人して座りながら私は青空を眺めた
『沖田隊長…』
「なんでィ豚」
『大石です』
『今日は良い天気ですね…』
「そうだな」
『私たちどれくらいここにこうして居るんですかね?』
「…さあな」
『いや"さあな"じゃないですよ!
もうかれこれ2時間もこうしてるんですよ!?
これってサボりじゃないですか!!』
「何言ってんでィ、公園で遊んでるガキどもが
何か悪さしねーよう見張ってるんでさァ」
『いや横になってアイマスクしてますよね?
どう見てもサボりですよね?』
「チッ」
今舌打ちしたよこの人!!
『もー勘弁してくださいよ、
私一応真面目で通ってるんですから』
「会議に寝坊して来た奴がよく言うぜィ」
『う"っ…』
隊長の言葉に何も言い返すことが出来なかったので私は黙るしかなかった
私達の上には満開の桜が咲いていて風に揺られ、たくさんの花びらが舞っていた
確かあの日も…桜が咲いてたな。
あれから2年か…。
ー 結衣っ!行ってくるな ー
ー 必ず戻ってくるよ ー
『…嘘ばっか…』
落ちてきた花びらを見つめた
「オイ豚」
『大石です』
いつの間に起きたのか沖田隊長はアイマスクをずらして起き上がり、ベンチに座っていた
「…お前、まだ野郎のこと考えてんのか?」
ドクン
『……え?』
振り向くと沖田隊長は私の方を見ようとせず、ただ目の前のはしゃぐ子供たちを見つめていた
「野郎はもう…死んでるのに」
どうして…
どうしてそんなことが言えるのだろうか。
『別に…沖田隊長には関係ないですよ』
「…」
こんな言い方じゃまた怒られる。
そう思ってたのに
「確かに…関係ねェな俺には」
それだけ言って隊長は立ち上がり歩き出した
『……』
思い出したくなかったわけじゃない
ただあの人の一番近くにいてあの人を救えなかった自分が腹立たしくて酷く情けなかった
「オイいつまでそこに座ってんでィ。サボりって言われてーのか」
そんな自分を変える為、
今度こそ護る為に私はここにいるんだ。
『いやサボってたのそっちィイイイ!!』