第26章 他人の惚気話は無駄に長く感じる[杏子side]
それにしても…少し喋り過ぎちゃったかな…。
お節介とは分かっていてもこんな性格だからつい気になっちゃうし。
かと言って別に銀さんか沖田さんを応援するとかではないんだけど…
肝心の結衣さんはあんな感じ(鈍感)だし…。
でもそうだよね…何で好きなのかとか、どうしたら想いが届くのかとか、きっと恋は理屈じゃない。
「あれ、倉本さんおかえり」
ただ、「好き」なだけなんだ。
屯所の門の前で迎えてくれた山崎さんに会釈し、中に入った
食堂の前を通ると中からは相変わらず賑やかな声が聞こえて来る
…ていうかまだ人生双六やってるのか、あの人たち。
「結衣ちゃんなら中にいるよ」
「え?」
呆れてその場を通り過ぎようとしたが、山崎さんの一言に驚いて勢いよく振り返った
そっと食堂を覗くと盛り上がる隊士たちの輪の中心には人生双六を全力で楽しむ結衣さんの姿があった
「見たか大石!俺はこれから順番が来る度に1億円手に入る男だぜ!」
『フッ、甘いですね原田隊長、この改造兵器超無敵身体を手に入れた私は順番が来る度に出た目の倍進むことが出来るんですよ!』
「な、なに!つーかそれは喜んでいいのか!?身体改造されてんぞ!!」
な、なんか楽しそう…。
『やったー!幸福の女神様に好かれ今後毎回順番が来る度に一千万ずつゲット!!』
「な、オイ大石!お前さてはイカサマしてるな!!」
『イカサマなんてしてませんー正しい行いを女神様が認めてくれたんですー』
「ふざけんな!」
落ち込んでるどころか…至っていつも通りなんですけど!
結衣さんの姿に拍子抜けしていると私に気づいた結衣さんが嬉しそうに駆け寄って来た
『杏子ちゃん!今帰ったの?』
「はい、ついさっき…。というか結衣さんこそ…いつ部屋から出られたんですか?」
『私もついさっきだよ、オフだけど少し寝過ぎちゃったな』
「あ、寝てたんですか」
笑う結衣さんにつられて私も苦笑いを浮かべる
「あ、そうだ、帰りに餡蜜買ってきたんですけど、良かったら一緒にどうですか?」
言いながら買ってきた餡蜜の袋を見せると結衣さんは目を輝かせて笑顔で首を縦に振った
「…。」
まぁ…たしかに、好きになっちゃうの…わかるかもしれない。